(画像はイメージです)
今回はいつもと少し趣向が異なりますが、当グループにあったちょっといい話を紹介させてください。
当グループの一社で、高齢者施設向けの給食事業などを行う株式会社イートハピネスの社員が弁当の配食サービスを行った時に、
利用者様の異変に気が付き、(残念ながら、発見時には利用者様は亡くなられていたのですが)警察はもとより、ご家族の方にも大変感謝されたということがありました。
今回の主役は山本誠一さん、74歳。10年以上「宅配クック123茨木店」で働いておられるベテランの方です。ライフケアグループとして関わったのは約4年前からになります。
◆普段と違うことに気づき、それを放置しない
山本さんの仕事は茨木エリアで在宅の高齢者の方々に向けて弁当を配ることです。それは今年の8月、夏真っ盛りの頃のことでした。
いつも通り、市から依頼されている弁当の配達を行おうと、利用者様宅を訪れた時、いろいろな点で「いつもと違う」ことに気が付いたそうです。
市からの依頼では、利用者様宅へ弁当を手渡す時は、①本人への手渡し、②印鑑を押す、ことが求められていました。
これまでもその手順を守って弁当を配っていた山本さんですが、その日に限って、
①ドアが開いたままになっていた、
②呼びかけにも応じない、
③いつも玄関においてあるはずの印鑑を押す用紙がない、
④テレビの音、扇風機の動く音がしているーと、いろいろ不審なことが重なって見えたと振り返ります。
ここでちょっと山本さんの経歴を振り返ると、もともと公務員をしておられ、今も新型コロナウィルスの感染拡大防止で活躍している、あの検疫の仕事に従事しておられたそうです。
その仕事では人の顔を見て、健康状態を瞬時に判断しなければいけなかったそうで、そうした優れた気配り、注意のあり方が、今の普段の仕事の中でも知らず知らずの内に作用しておられたのかもしれません。
ちなみに、公務員を退職された山本さんが、この仕事を選んだのは「たまたま募集を見た」ということもあったようですが、もともと「外を歩くのが好き」というのが動機の一つだったようです。
配達員であれば、当然外を回ることになるのですから、天職のように感じておられるのかもしれません。
それはともかく、普段は利用者様宅へ配達に伺っても家の中を覗く程度なのに、その日に限って山本さんは抱いた胸騒ぎに導かれるように、そのまま利用者様宅の中へ入っていったのでした。
そうすると、案の定、リビングのベッドの上に座った状態から横に倒れたような感じでぐったりしている利用者様を発見したそうです。
山本さんが確かめるともうすでにその時、利用者様は息をしておられない。扇風機こそ回っているもののクーラーもついていない部屋の中は、熱気でムンムンしていたそうです。
山本さんは汗だくになりながら、まず店に電話、次に利用者様の娘様に電話連絡して、それぞれの了解を得たうえで救急車を呼んだそうです。
救急車を呼んだ時、救急隊員に要請され、それまで「見たことはあった」程度しかなかった心臓マッサージをやり続けたそうです
◆欠かせない情報の共有
もともとこの利用者様宅へは、週に3回、弁当を配っていたようですが、いつも山本さんが配っていたというわけではなく、違う配達員の方も配っていたといいます。
常日頃からそうした配達員の間で、利用者様に関する情報交換は行われているといいます。残念ながら、今回はまったく突然のことで、そうした普段の状態から事前に予知できるものではなかったようですが…。
このようなことに遭遇するのは滅多なことではないように思いますが、なんと山本さんには過去に思いがけなく利用者様の急変に合ったケースがこれ以外にも4回もあったとのことです。
そのうち1回は、今回同様、倒れて亡くなられていたのですが、その時は食事をしたままの状態だったといいます。
やはり山本さんの嗅覚が「普段と変わったところはないか」を嗅ぎ分けるのかもしれません。それでもその特性は決して生来のものというより、
むしろ誰もができる「利用者様の顔を見て、普段と違ったところはないか」を常に意識することで身に付いてきたものなのでしょう。
そして、何より大切なのは、(今回は突然のことでしたが)そのことを自分だけの情報に留めるのではなく、「配達員同士で共有すること」だと言います。
山本さんは、利用者様から「いつも配達してくれてありがとう」というお声掛けをいただいた時などは仕事に遣り甲斐を感じるといいます。
逆に、「昨日の弁当はいつもと味が違っていたな」と指摘されることもあって、いつも思い通りの反応を得られるわけではないそうですが、
それもこれも利用者様の顔を見て、しっかりとコミュニケーションを取れているからこそ得られるものです。
年齢的にいつまで働けるか分からないけど、山本さんは「辞めてくれといわれるまで働きたい」とまだまだやる気満々。仕事が休みで暇な時にはウォーキングを楽しむという自称「動」の人。
これからも店のバイクで弁当を運ぶ毎日が続きます。いつまでもその元気な姿を見ていたい、私たちの頼もしい助っ人です。